慈覚大師の肉食を禁じる教えは、戦前まで固く守られてきたということですが、恵さんはいまでも肉を口にしません。それが当たり前のこととして、育ったのです。
自宅の庭先の畑には、恵さんが丹精込めた30種以上の野菜が元気に育っています。
「野菜もお米も自分で育てているから、ほぼ買うことはないです。畑は20代からやっていて、私にとって畑仕事とすず竹細工はどちらも欠かせません。ふたつをこなすことでバランスをとっています」
どんなに忙しくても、早朝に畑仕事を済ませ、それからすず竹細工に取り掛かるのだそうです。
若いときから野菜づくりをしてきた恵さん。すべて種から育てるようにしているそう。
キャベツ、大根、白菜、ブロッコリーなど、30種以上。
極力農薬を使わないようにしているため、虫に食べられないようこまめに目を光らせなくてはならないが、「すず竹細工で行き詰まったときは、畑仕事がいやしになります」とのこと。
鶏肉を入れてだしをとるのが一般的なつくり方のようだが、恵さんは肉を食べないので、豆腐を油で炒め、にんじん、ごぼうなどの根菜類、たっぷりの野菜でだしをとる。
あらかじめ前の日に、ひっつみ粉に水を加えて耳たぶくらいの硬さに練ったら、冷蔵庫でひと晩ねかせる。
こうするとツルツル、モチモチとした食感になる。
当たり前といえば当たり前なのだが、恵さんの自宅にはそこかしこでかごが使われている。
工房の片隅で新聞入れになっているかごに目が留まった。両脇に手が差し込めるようになっていて、欲しいと思う人がたくさんいそうだ。
商品として売られているかと伺ったら、「もう30年前につくったきり、そのままです」
たしかに枯れずに残っている群生地がありました。ただし、鳥越のように気軽に採るというわけにはいきません。
山には所有者がいますし、スズタケが使える状態かどうかの見極めも必要です。さらに、熊の出没による危険性もあります(これは鳥越も同様ですが)。
それでも、新たに採取場所を開拓することができたら、そして、後進が育って技をつないでいくことができたら、すず竹細工の未来にひと筋の光明といえましょう。
出典:天然生活


