希少トウモロコシを栽培 「郷のきみ」糖度20度超

— 「郷のきみ」糖度20度超のフルーツのような甘さ —

 青森県と秋田県にまたがる十和田湖の東側に位置する青森県新郷村に希少なトウモロコシがある。その名は「郷(さと)のきみ」。徹底した栽培管理と出荷基準に加え、昼夜の寒暖差によってはぐくまれる糖度が高い朝採りのため、生でも食べられるほど新鮮でフルーツのような甘さが特長だ。生のまま一口かむと粒から出る程よく甘いジューシーな汁が乾いた喉を潤し、ゆで上げを食べると甘味が口いっぱいに広がる。トウモロコシの概念を覆すような逸品に衝撃を受けた。

 青森市から車で約2時間。同村川代地区にある中平将義さん(42)のトウモロコシ畑を訪ねた。中平さんは4農家で組織する「新郷村郷のきみの会」のメンバーで、自身は約100アールを作付けしている。

「まずは生で食べてみて」と中平さんが茎の一番上に実ったものをもぎ取った。トウモロコシを生で食べる機会はあまりないだけに、やや戸惑いながらかぶりつくと、みずみずしく程よい甘さの汁が口中に広がった。取材日の気温はゆうに30度を超えていただけに、水分補給にはうってつけ。むさぼるようにあっという間に完食し、今まで食べてきたトウモロコシとは明らかに一線を画した味に驚いた。

 戸来(へらい)岳の麓に広がる冷涼な山間部で生産される郷のきみ。中平さんによると、おいしさの秘密は同村が長年、酪農が盛んだったことから有機質を多く含んだ肥沃(ひよく)な土壌に恵まれ、昼夜の寒暖差、豊富な湧き水が強い甘味を引き出しているという。「今の時期は、昼夜の寒暖差が20度くらいある」と中平さん。今年は適度に雨が降るなど天候に恵まれたことから品質も良く、糖度も20度を超えているという。

 こうした自然環境に加え、生産者のたゆまぬ努力もおいしさの秘密だ。糖分が十分に詰まったタイミングを逃さないため、朝露のある日の出前から畑に出向き、収穫するのは茎の一番上にできた実のみ。さらに、指でなぞって粒の入り具合や虫が入っていないかも念入りに確認したものだけを出荷する。中平さんは「完璧に実が入ってフルーツ感のあるものしか出さない」と生産者としてのプライドをのぞかせる。

 新郷村によると、郷のきみは平成21年に試験栽培が始まり、22年にデビュー。昨年度の作付面積は300アールで約3万1000本を出荷し、今年度は作付面積を480アールまで拡大した。令和5年に県外出荷を始め、これまで都内の三ツ星レストランで取り扱っているほか大手百貨店などでも販売がスタート。中平さんは「郷のきみは村の誇り。これからも品質を高めて日本一おいしいトウモロコシが新郷村にあるということをPRしたい」と意気込む。

 郷のきみに懸ける中平さんらの熱意に感銘を受け、戸来岳を望むトウモロコシ畑の風景に思いをはせながら自宅に戻り、さっそくゆでて味わった。生とは違う果実のような甘さとやわらかい食感に、箸ならぬ口が止まらなかった。

 
出典:産経新聞