青森県は、豊かな大地と清らかな雪解け水、澄み切った空など、おいしいお米を育む自然条件に恵まれた国内有数のお米の産地です。
米の産地というと、新潟県や北海道、秋田県などをイメージする人が多いかもしれませんが、実は青森県も米の食料自給率が300%超えと、国内有数の米の産地。県内で生産される“あおもり米”の主力品種は、〈青天の霹靂〉〈はれわたり〉〈まっしぐら〉の3つがあります。今回は、2006年にデビューし、青森県で最も作られているお米〈まっしぐら〉についてご紹介。
「稲の病気である“いもち病”に強く、収量が安定するため、現在では青森県の看板品種となっています。県内全域で作付けされ、最も多く生産されています。やわらかすぎず硬すぎず、万人受けする食感と粒感だと思います。あっさりとした甘みで、何にでも合いますよ」
〈まっしぐら〉のおすすめの食べ方について、「万能なお米なので、卵かけご飯のようにシンプルにお米を味わうのはもちろん、チャーハンのように炒める食べ方でも幅広く相性がいいと思います」と、川村さん。
五所川原市の成田収聴(しゅうき)さんは、津軽平野を縦断する五所川原の中里広域農道、通称「こめ米(まい) ロード」に面して広がる田んぼで〈まっしぐら〉を栽培しています。
「〈まっしぐら〉は病気や倒伏に強く、天候に左右されにくいので、品質が安定していて収量を確保しやすいのが特徴です。農家にとってはつくりやすく安定的に販売しやすい、頼れるお米。私たちはできるだけ農薬を減らしながらも、安定した収量を確保できるように工夫しながら栽培しています」
成田さんは、祖父母から続く米農家の3代目ですが、もともと農家を継ぐつもりはなかったといいます。
「幼い頃から親や祖父母が農作業をしている姿を見てきましたし、たびたび手伝わされてきました。それが嫌だったので、家を離れて、絶対に別の仕事に就くぞ!と(笑)。県内の大学を卒業後、パンクやロック音楽を学ぶためにカナダのトロントに5年ほど住み、帰国後も東京でDJ活動をしていました」
家業を継ぐのを避けていた成田さんが、農家になることを意識するようになったのは、2011年の東日本大震災後のボランティア活動がきっかけでした。震災直後に福島へ行った際、田んぼの壊滅的な状況を見て危機感を覚えました。
「そのとき、かつてあんなに嫌だった田んぼが、自分の中で原風景になっていて、創作活動にも影響を与えてくれていたことに気づきました。親も歳をとってきているし、家の田んぼは大丈夫なのだろうかと考えるようになったんです」
翌年Uターンすると、家業を手伝うようになった成田さん。農業を始めてから、「自然に生かされている」と実感するようになったそう。
「〈まっしぐら〉は、お米の粒が白くツヤがあって、炊きあがりも粒立ちがよく、時間が経ってもおいしいです。粘りが控えめなので丼や寿司にも使いやすいのも特徴のひとつ。今日は、わっぱのお弁当箱にご飯を用意して、スーパーで納豆と塩漬けすじこを買ってきました」
五所川原市内の金木町出身の文豪、太宰治も愛したと言われる「すじこ納豆」。食べ方は人によって違うようですが、成田さんはすじこの粒がバラバラになるまで混ぜる派。
「その名の通りすじこと納豆をかけ合わせただけのシンプルなものですが、お米とともに永劫食べ続けたいと思わせる魅力があると思います」
かつての自分のように、お子さんが田んぼを訪れることも。今は田んぼよりも虫を見るのに夢中とのことですが、お子さんにとっても、ここが原風景になるのではないでしょうか。
「子どもには、農業に限らず自分の好きなことを自由にやってほしい」と話す一方で、若い人にどんどん農業に挑戦してほしいとも。
「ドローンやAI制御など、機械や技術が発展して、農業はやりやすくなってきています。昔の農家さんよりも自由な時間が増えているので、私のように半農半Xの可能性が増えています。もし農家になりたい若い人がいたら応援していきたいですね」
そう話す成田さんの思いを胸に、田んぼを後にしました。
出典:コロカル

