短期間で山アスパラ栽培、富山県森林研が実験中

 

食用になるまで7~8年かかる

 富山県県森林研究所(立山町)が、「山アスパラ」とも呼ばれる希少な山菜「オオナルコユリ」の栽培期間を短縮する研究に取り組んでいる。通常は種をまいてから芽が出るまで約2年かかるが、温度処理によって出芽までの期間を短縮できることが実験で確認された。同研究所では将来、新たな特産として栽培技術を普及させたい考えだ。

 オオナルコユリは低山の木陰などに自生するユリ科の多年草で、6~7月に白い花を付ける。春に出る長さ20~30センチの新芽は食用になり、甘みのあるあっさりとした味とサクサクした歯触りから、「山アスパラ」とも称される。

 だが、群生しないため採れる量が少なく、ワラビやゼンマイなどに比べ知名度が低い。東北地方では人工栽培も行われているが、種をまいてから出芽まで約2年、さらに収穫できる大きさになるまでに5年ほどかかる。こうした栽培期間の長さが普及を妨げ、市場にはほとんど出回らない“幻の山菜”となっている。

 同研究所では、この希少性から、今後の需要拡大が見込めると着目し、人工栽培の研究を開始。奥村紀夫副主幹研究員は「誰もが知っているわけではないが、味がいい。アピール性がある」と話す。

 種は冬を2回越すことで初めて出芽する。奥村研究員は種を5度の冷蔵庫で2~3か月冷やした後、恒温器に移して日中は20度、夜間は10度に保温し、再び冷蔵庫で冷やす実験を行った。こうして季節を人工的に再現することで、短期間で出芽を促すことができるとわかった。「今年の秋に種をまけば、来春には芽が出るめどが付いた」という。

 今後、出芽した苗が収穫できる大きさに育つまでの期間を短くする研究にも取り組む予定だ。「短期間で栽培する技術を確立し、生産に結びつけたい」としている。

出典;(2011年9月3日 読売新聞)