人類は、栽培している間に現れた突然変異を起こした作物を利用して、古来より人間が希望する方向へ作物の性質を変えてきました。例えば、イネやコムギの祖先は、籾(もみ)が落ちやすいという性質があるため収穫時のロスが大きかったのですが、長く栽培を続ける中で、籾が落ちにくくなる突然変異が起きたものが選ばれてきました。たくさん実っても倒れにくいように、背が低くなる突然変異もよく利用されてきました。また、ナスには受粉をしなくても果実が大きくなるものが見つかっていますが、これも普通のナスが突然変異したものです。
目的の突然変異が起きるのを待つだけでは効率が悪いので、新しい品種を作るためによく使われているのが、性質の異なる品種同士を交配する方法です。まず、どのような性質の品種がほしいかという目標を決めます。たとえば、おいしくて病気に強い品種を作るとしましょう。今ある様々な品種の中から、目的の性質を持つもの(おいしい品種と病気に強い品種)を選び出し、一方の花粉をもう一方のめしべにつけ、種子をとります(交配)。すると、おいしい品種の遺伝子とおいしくない品種の遺伝子、また病気に強い遺伝子と病気に弱い遺伝子の両方の遺伝子を持つ種子ができます。得られた種子をまいて、目的の性質に近い性質のものを持つものを選び(選抜)、さらに交配の親として用いた品種と交配するという作業を何回も繰り返すことで不要な性質(遺伝子)が必要な性質(遺伝子)に置き換わったものを選んでいきます。性質が安定すれば新品種が完成です。新しい品種を作るまでには、イネでは10年くらい、果樹では何十年もかかります。
交配による品種改良では、交配の親としてさまざまな特性の品種を数多く用意しておくことが必要です。そのため、品種改良を行う種苗会社や研究所では多様な品種の種子を保管しています。それでも、目的の性質をもつ品種が見つからないこともあります。そのような場合は、遺伝子を変化させて目的に合ったものを新しく作る必要があります。そのために、放射線や化学物質等を用いることで突然変異を起こさせたり、遺伝子組換え技術で他の生物の遺伝子を入れたりすることで、目的の性質を持たせる方法が開発されてきました。ゲノム編集技術も遺伝子を変化させて目的に合ったものを新しく作りだす品種改良技術の一つとして、その利用が研究されています。新しい品種を作る方法はさまざまですが、どれも遺伝子の変化による性質の変化を利用しています。
参照:バイオステーション

