杉は種から育てるの?

「100年後の未来」を見据え、森づくり

 あまり皆さん知らないと思います。
 日本の山に沢山植えられている杉の木はどうやって出来たのか。
 野菜にみたいに種を蒔いて育てたのか。それとも自然に生えている杉の木を抜いて持ってきて育ててまた植えたのか…

 よくよく考えてみると不思議ですよね。

 さて毎年日本の山に植えられる杉の木。

 こんな感じで山には来ます。

 25本ずつ束ねられています。
 この「山に植えられる杉の苗」になるまで、『杉苗業者』が育てて、そしてそこから山師にバトンタッチして私達が山に植えるのです。

 じゃぁ杉苗業者は野菜みたいに種から育てているのか…
 みなさんどう思います??

 答えは意外や意外。
 
「西日本と東日本で違う」が正解です。

 正確には九州と九州以北かな?で違います。四国については…知りません…自分で調べて下さい。

 九州以北、つまり本州では実生(みしょう)と言われる「種から」杉の苗が育てられます。こういう苗を「実生苗(みしょうなえ)」と言います。映画WOODJOBで見られる高い木に登って杉の種を採るシーン。あれは三重の林業地帯がモチーフだからこそのシーンですね。九州だったらそうはいきません。

 じゃぁ九州はどうなのか。
 九州は種ではなく「挿し木(さしぎ)」で苗が作られます。
 山にある杉の木から枝を採り、それを土に挿し、枝から根が生えてくる事で杉の苗になります。山に生えている優秀な杉の木を選定し、その遺伝子を活用する事で優秀な杉の木を増やそうとした訳です。こうやって育てられた杉の苗は「挿し木苗」と言われます。そして「クローン苗」とも言われています。

 人間に例えると、実生苗は遺伝子は似るとしても2種類の遺伝子が混じる事で発芽する訳ですから、子どもができるようなもんです。似ているけど完全に一緒では無いですよね。でも挿し木苗はその木をまんま使う訳ですから、人間の皮膚からクローンを作る様なもんなんです。全く同じと言ってもいいでしょう。
同じ杉の木でも地方によって生産方法は全く違うわけなんです。

 これはどちらが良いというのはないのですが、どちらもメリットデメリットがあります。

 優秀な遺伝子の苗ばかり使うので、生育が良く品質も向上します。山全体の木の成長も均一ですので、一度の伐採で均等な製品が得られます。ですが遺伝子が同じという事は一つの悪要因で全滅する可能性があるのです。ある病気に弱い遺伝子があった場合、その遺伝子を持つ大量の杉の木も病気にかかる恐れがあります。どちらかと言えばハイリスクハイリターン。

<実生苗>
 様々な遺伝子を持つ苗ですので、成長にばらつきがあり、優秀な苗ばかりとは行きません。木は植えて30~50年経たないと成果が目に見えませんから、不良品種でも一定期間育てなくてはいけません。種からですからコストもかかります。成長した山も一本一本生育がバラバラですから、安定した製品が採れるとはいえにくい。でも遺伝子的に多様性があるので一つの病気で全滅するといった確立は低い。どちらかというとローリスクローリターンです。

 実生苗と挿し木苗がどうして九州と本州で分かれているのかは、気候的な部分とその林業地の歴史、木材の特性なんかが複雑に絡まっているのだと思います。そしてあくまで一般的な話で、本州でも挿し木苗は作られていますし、九州でも実生苗は作られています。

 今日の話聞いて個人的に「こっちがいい」という考えは生まれると思います。これが大事なんだと思うんです。まず知る事。じゃないと選択できませんからね。
 そして次に大事なのは「どちらか」に偏るのではなく、特性を理解した上で「使い分ける事」だと思います。どちらかが良くてどちらかが悪いでは無いんです。日本人どっちかに偏るの好きですからね。どっちもチョイスできるようにしたいですよね。個人的には宮崎の渡川でも実生苗やりたいな~と思ってます。同一遺伝子ってのはやっぱり怖いですよね。

 
出典:HUTTEinc