梨狩りにいったときの風景を思い出すと、広い敷地に大きな木が育っていて、人の背丈より少し高い棚いっぱいに枝が巡らせてあって、そこに葉が茂り、実がぶら下がっている——というのが普通だと思う。写真1は、このような伝統的な方法で栽培している梨だ。木1本が覆う面積は50平方メートルから100平方メートルにもなる。
だがこれだと、農家はずっと上を向いたまま剪定や収穫の作業をしなければいけないので、くたびれる。それに何より、木を大きく育てるまでの間、収穫量がなかなか増えない。収穫量が本格的に増えて安定する(成園という)までに10年もかかるという。
リンゴなど他の果樹については、枝が勢いよく伸びなくなる矮性(わいせい)の台木を開発した上で、コンパクトな樹形に抑えるように剪定し、列状に並べることで、剪定や収穫をやりやすくする「矮化」栽培が当たり前になってきた。また隣の木との間隔を狭くした密植にすることで、収穫量が最大になるまでの時間が短い早期成園を実現した。
そんな今から30年前の剪定作業中、柴田さんは同僚が「大きく伸びた枝同士、いっそのこと接ぎ木したらどうだ」と冗談を言っているのを聞いた。そんなことをしてもさしたる意味はないのだが、これで柴田さんは閃いた。
梨の木の苗を一列に並べ、数珠つなぎに接ぎ木したらどうか——
それでできたのが写真2のような梨の木である。
苗木を植えるとき、左側の木を途中で曲げて右の木に接ぎ木する。それを10本の木について繰り返すと橋の欄干のような形になる。写真2に写っているのは、そうして28年経ち、だいぶ太くなったものだ。
この奇抜な栽培方法は、「ジョイント仕立て」と命名された。
ジョイント仕立てを始めると、いくつも良いことがあった。
主なメリットは、リンゴなどの矮化栽培と共通のものだ。つまり、隣の木との間隔が短い密植になるので、早期成園ができる。一列に並んでいるので、農作業の動線も直線になって、剪定や収穫などがしやすくなる。肥料投入などのための農業機械も使いやすい、等々。
加えてジョイント仕立て独特のメリットとして、枝の伸びる長さや実の成り方が均一になる、ということがある。写真3を見ると、むらなく枝が伸び、葉がついて、実がなっている。
実際に農園を作って試験してみると、ジョイント仕立てでは、剪定・収穫などに要する労働時間が従来の方法に比べて半減できることが分かった。
このようなジョイント仕立てのメリットが確認されると、いくつもの国の技術開発プロジェクトによって研究がさらに推進され、また、梨以外の柿などの果樹にも応用された。すでに矮化栽培の発達している果樹品目であっても、ジョイント仕立てを併用することでそのメリットを活かせるという。

