中国のブドウ事情について    

現地で見聞きしたブドウ栽培の“リアル”をレポート

 建水県には、数多くのブドウ園があり、道路から見渡す限りブドウのハウスが建っているような状況もしばしば見かけた。

 案内をしてくれた人に聞いたところ、これらはほぼ全てがシャインマスカットの畑なのだという。日本から流出した品種がこんなに大規模栽培されている様子を見て、もちろん思うところはいろいろとあるが、日本とは桁違いのスケールには驚くほかなかった。

「“ほぼ”全てが」というのは、ごく一部にアメリカ・カリフォルニア農業試験場作出のレッドグローブと、山梨県果樹試験場作出のサマーブラックがあるのだと教えてもらったからだ。

 サマーブラックは日本国内ではあまり栽培されておらず、いちマイナー品種として扱われているが、硬めの食感と濃厚な味わいを持ち、熟期が早いこともあって、「中国では巨峰以上に大人気らしい」という話を聞いたことがあった。質問すると、おおむねその通りだが、現在ではシャインマスカットの人気に押されて、栽培面積は急激に減っているとのことだった。

 かつてサマーブラックが人気だった頃は、無摘粒で作っていたそうだ。

 見学に訪れたブドウ園も当然大規模で、ブドウハウスがひたすら続き、端が見えないほどだった。聞いたところ、面積は8ヘクタールもあるらしい。労働人数は日によって変わり、アルバイトが100人単位で来る日もあると教えてくれた。

 中に生えているのは6年生のシャインマスカットで、1房10段で房作りをしている。日本と比べると、だいぶ大きい印象だ。

 なんでも「中国では大きな房が人気で、見栄えが悪いものはそもそも買ってもらえない」そう。そのため、中国のブドウ農家は、味は二の次で大房化させる傾向にある。

 日本では一般的に、1房650グラム程度に抑えて房作りをするケースが多いが、中国では1キロ以上が当たり前で、時には2キロ近くになることもあるそうだ。

 確かに、以前タイや香港で見かけた中国産シャインマスカットは、日本では見たことのない大房の物が並んでいた。

 さらに、収量を稼ぐために、着果量も非常に多くなっており、日本より全体的に樹勢が弱くなっている。木を見ただけでも、日本とは全く違う思想でブドウを作っていることが見て取れた。

 また、2度目のジベレリン処理は初回の3週間後に行い、袋掛けは収穫2週間前に行うのが基本の作り方だそうだ。袋掛けが遅い理由を聞くと「早く袋掛けをすると、粒が大きくならない」との返事があった。

 また、雑草の処理についてはどうしているのか尋ねてみると、人によっても違うが、「黒いシートを敷いて防除する」「農薬で枯らす」「そのまま」というパターンがあるそうだ。着果量が多く、葉もたくさん生い茂るので、そもそも日光が当たらず地面に雑草が生えないケースもあるとのこと。

 房の生育がそろっていないのも着果過多によるものだろう。作業が大変そうだが、人海戦術でカバーしているのだろうか。

 台木は主にアメリカで育種された貝達(ベータ)という品種を利用しており、赤土でpHが低いところに向くのだという。また、伐採したサマーブラックの木に継いでいる場合もあるそうだ。

 研修の翌日は、また別のブドウ園に連れて行ってもらったのだが、筆者の見た限りではそこが一番レベルが高いように感じた。

— 中国ブドウ栽培のこれから —

 実は、中国ではシャインマスカットからブルーベリーへ転換する動きがあるのだという。

 研修の最初に訪れたブドウ園では、木のないハウスがあり、大型のポットが大量に転がっていた。これは一体何なのかと聞くと、シャインマスカットを伐採し、跡地でブルーベリー栽培をするのだと言っていた。

 なんでも、シャインマスカットが飽和した結果、市場価値が暴落し、農家の収入が一気に落ちてしまったそうだ。今回見学した建水県は中国で最も早場の産地なので、出荷価格は比較的高いが、他の産地ではキロ単価が100円以下になるケースもあるのだとか。

 
出典:マイナビ農業