罠のドラム缶を破って逃げた強者も
クマの罠も見せてもらった。ドラム缶を利用したトンネル型の仕掛け罠で、入り口付近には好物のハチミツを置き、さらに行き止まりのトンネルの奥にもハチミツを置いて誘導する作戦だ。
奥にあるハチミツ付近には、踏み台の様な板があり、それを踏むと後方の鉄板が落ちて、クマが閉じ込められるという。ただ、爪が鋭く、牙も鋭利で噛む力も強いため、そのドラム缶を内側から破って逃げた強者もいたという。
その罠を見せてもらったが、鉄製のドラム缶が1メートル近く裂けている様を見て、クマの破壊力を実感せずにはいられなかった。その裂けた穴の周辺には真っ黒なクマの体毛が付着していて、猟師から逃げようとする必死さも伝わってきた。果樹園などからの要請を受けて罠を仕掛けるというが、今年は例年の倍近い5頭が罠にかかったという。
「クマは増えていない」
しかし、脇谷親子は、山や罠でクマを仕留めたりする中で、ある違和感を覚えていた。実は、自分たちが管理している山の中ではクマは増えていないというのだ。
一方で専門家らの一般的な見解はこうだ。去年はドングリなどが豊作でクマも出産ラッシュとなり、頭数が増えたが、今年は凶作だったため、エサが足りず、人里まで降りてきたのでないか。しかし、クマ猟師として連日山に入る脇谷親子は「クマの絶対数は変わっていないのではないか」と推測している。
ただ、エサがないため人里へやってきていて、そこで人目に触れるため、クマが増加していると錯覚しているのではないかというのだ。去年産まれたクマが多いのなら、山でも罠でも相対的に若いクマが捕獲されるケースが多いはずだが、仕留めるクマはほとんどが5歳以上だからという。もちろん、東北を中心に全国的に増加傾向にあるクマだが、猟師が定期的に山に入る地域によっては、事情が異なるのかもしれない。
人を襲う被害が出ているため、駆除は必要かもしれないが、行き過ぎた駆除はクマの過度な減少を招くのではないかと、猟師の脇谷親子は不安を口にしていた。

