シオデ(ひでこ)

 

— 栽培・経営の特徴 —

シオデの人工栽培は、最近になって試みられたばかりで、未知数なところが多い。
自然物の収穫量も極端に少ないため、市場に出回ることはほとんどなく、したがって価格形成もみられないため栽培経営的な位置づけは、今のところ難しい。
しかし、この山菜は、山のアスパラと称されるほどで、その良食味と希少性から、将来有望な山菜の一つであるので栽培技術の研鑽に努め、良品生産を目指したい。

— 品種・系統と特性 —

特定の品種はないが、近縁種に直立性のタチシオデがある。

198.jpg

— 栽培方法 —
— (1) 栽培適地 —

自生地におけるシオデの適環境は、日当たりのよい原野や草原、スギ林の林縁などである。土壌条件は、排水がよくかつ保水力に富み、肥沃なところで、礫質まじりのところがよい。増殖方法には山取りによる株分け苗の移植で増やす方法もあるが、土壌条件が変わると、活着しにくい性質があるため、実生繁殖による方法が一般的である。

— (2) 種子採取 —

シオデの花は、7~8月にかけて、多数の小さな淡黄緑色の花をつける。花後、球形の緑色をした液果(果肉の中に種子を持つ果実)を結実し、10月下旬には黒く熟してくるので、これを採種する。

— 春先に発芽したシオデの幼苗 —
— (3) 精選 —

採種した液果のまま放置しておくと果肉と一緒に種子が 腐敗するので、果肉をつぶし中の種子を取り出す。次に容器に水をはり、種子を入れてかき回すと果肉や粃(しいな)が浮くので捨てる。そして充実した種子は下に沈むので、これを取り出す。シオデの種子は一度乾燥させると発芽率が低下するので、播種するまでの間湿った砂にまぶすとよい。

199.jpg(4) 播種時期
シオデの種子は、長期休眠があるため(11月中旬)取播きした場合でも発芽するのは1年6ヶ月後の翌々春となる。

— (5)播種 —

播種床は、やや深めの育苗箱(15cm位)で赤玉土を用い、あらかじめ湿らせておいたところへ11月中旬頃に播く。その際、10cm間隔の播き溝に条播きする。種子が隠れる程度に覆土をし、ワラを薄く敷き、乾燥を防止する。また、発芽するまで1年6ヶ月もかかるため、その間乾燥しないよう適宜灌水を行う。

— (6) 定植 —

定植地としてスギ林床を活用する場合は、樹齢15年~20年生の陽光の差し込む肥沃で排水のよい場所がよい。畑地などを利用する場合は、特別乾燥しすぎる場合を除いて寒冷紗などを必要としない。床には、鶏糞1a当たり100kgを定植の1ヶ月前までに施し、耕耘して土となじませ、うね幅1m高さ10cmの播種床をつくる。発芽して、草丈が10cm程(7月頃)になったら、定植を行う。掘り取る際、直根が10cm程に伸びているで痛めないよう注意し、株間50cmの2条植えとする。

— (7) 定植後の管理 —

定植後の2~3年間は除草を行うが、それ以降は除草も移植も行わない。追肥は、茎葉が枯れあがった11月上旬以降に、油かすと鶏糞を1a当たり50kgづつ施す。また、春先に行う場合は、3月中旬の積雪の上か、消雪後ただちに施す。そして、4年目以降茎の部分が伸びて地面をはうので、支柱をたてからませるとよい。

— 収穫 —

播種してから約7年以上経過しないと本格的な収穫が望めない。収穫の際は、2番芽、3番芽は残してやるようにする。また収穫は1年おきが良い。

— [成果の内容・特徴] —

1.栽培地点の受光量は露場に対し崖下では3割、ポプラ林では6割に低下した。また、土壌水分は崖下では長くpF2以下に保たれ、テラスでは2週間でpF3至った(図1)。
2.定植後2、3年の生育は受光量が少なく、土壌水分の多い地点程良好であった(図2)。
3.敷わらや黒ポリマルチによる土壌水分保持と雑草防止をした農家では、活着と2年目の生育が良好であったが、マルチしない場合には、雑草との競合による枯死株が多い。山寄りの棚田転換圃の生育は良好であったが、停滞水の生じる時期のある平坦水田転換圃では、活着は良かったものの、2年目以降の生育が劣る傾向(図3)が見られた。
4.半日陰の得にくい場合には定植後と1~2回目の夏期、黒寒冷紗等で50%遮光する。潅水の効果は大きく、多水分を好む植物である(図2)。
定植3年7ケ月後の5月に、1回目のまとまった萌芽茎収穫が得られた。収量は収穫までの生育量に比例する傾向があり、最高収量154㎏/10a(図2)、株当り収穫本数は3.2本であった。なお、多芽体培養苗由来株の地下茎部は、多数の根におおわれた塊状で、複数の芽(次年度萌芽する冬芽)を形成することが明らかになった(写真1)。
5.(1)シオデの光飽和点は低く陰性植物的であるが、その光合成能は比較的高い。(2)気温32℃でも光合成速度はあまり低下せず、高温下でも栽培可能なことが判明した。 
【参照先不明】

 

Post a Comment

Your email is never published nor shared. Required fields are marked *