シャインマスカット開花異常

出典:日本農業新聞

 
 

“ぶどうの女王”「皮ごと食べられる」
「種なし」「大粒」「高糖度」

 ブドウ「シャインマスカット」の開花異常(未開花症)について、2023年産は21府県で発生を確認していたことが、本紙「農家の特報班」の全都道府県への調査で分かった。生産量や品質に影響があったとの回答は4県。報道などで症状や対処法の周知が進んだとの指摘もあった。 「農家の特報班」が昨年行った調査では、主産23道府県のうち、過去に15県で発生を確認していた。本紙報道を受け、農水省が同年4月に行った調査では、46都道府県のうち過去に30県域で発生を確認していた。
 今回の調査は各県で果樹の生産振興を担当する部署などに聞いた。シャインは全都道府県で作付けがあり、青森~宮崎の広範囲で発生を確認。東日本が多かった。ただ、各県は農家から寄せられた情報を基に回答しており、被害を把握しきれていない可能性がある。「農家の特報班」には、県から未発生と回答があった岡山県の農家からも発生の報告があった。他に山形県の農家から9本の木が全滅したとの情報も寄せられた。

 ブドウ生産量1位の山梨県は、複数の市町村で症状を確認したが「発生が多かった21年産に比べ、かなり少なかった」と説明する。だが要因は分からないという。同2位の長野県は、例年並みの発生だったとする。西日本では過去に発生を確認したが、23年産では症状が見られなかった県が複数あった。

症状や対処法浸透も

 未開花症の症状は花穂の先端部(房尻)で出やすく、房の付け根に近い部分を房づくりに利用すると被害を抑えられる場合が多い。各県によると、JAや県などの指導が進んだこともあり、「症状は見られたが、生産量や品質に大きな影響は出なかった」と回答した県が大半を占めた。

 本紙の報道や農水省の情報を基に「発生を注視しており、適切に対処できた」と説明した県もあった。一方、影響があったとする県では、一部の生産者から「収量が落ちた」「果実の肥大が劣った」などの報告があった。房づくりを工夫していたが、房の付け根に近い部分でも発生した場合があったという。

 農水省は昨年4月、シャインの未開花症を「緊急対応課題」に設定。農研機構と主産5県が発生要因の解明に取り組んでいる。被害状況や発生園の割合、原因などの調査結果を24年度に発表する予定だ。

<ことば>未開花症

 5、6月の開花時期になっても、雌しべと雄しべを覆うキャップ状の「花冠」が外れない症状を指す。発生すると花が落ちたり、果実が肥大しても形がいびつになったりする。原因は未解明。農研機構によると、同一地域での集中的な発生がないことなどから、病虫害ではなく生理障害とみられる。