「冷やすと甘くなる果物」と「甘くならない果物」

出典:日本植物生理学会


「夏休みに沖縄へ行ったときにマンゴーを食べました。農園で食べたマンゴーも美味しかったのですが、そこで切り分けたマンゴーをホテルに持ち帰って冷やしたら、もっと甘く感じました。果物は冷やすと甘さに変化があるのでしょうか? 他の果物はどうでしょうか? (小学生の方からの質問)


 果物の甘みは含まれる糖によるもので、主にショ糖(スクロース。いわゆる砂糖)、ブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)です。これらが含まれる割合は、果物の種類によって異なり、また、同じ果物でも品種や系統によって異なるだけでなく、栽培の条件でも異なります。その糖組成と、さらに酸味や香りが加わって果物の味が決まります。

 糖は種類によって甘いと感じる度合いに違いがあり、ショ糖の甘みを100とすると、ブドウ糖は70、果糖は80〜150くらいといわれています。果糖の甘みに幅があるのは、甘みが温度の影響を受けるからです。

 というのも、果糖は分子構造上、α型とβ型があり、高温ではα型が増えて、低温ではβ型が増えるというように、温度によって両型を行き来します。そして、β型の果糖はα型の果糖の3倍も甘く感じられるという特徴があります。つまり、より甘いβ型の果糖は、温度が低くなると量が増えることもあり、果糖を多く含む食品は 低温のほうがより甘く感じられるというわけです。

 ショ糖やブドウ糖の甘さには、このように温度で変わる性質がないため、果物の甘さの温度依存性は、糖全体に対してどれくらい果糖が含まれているかで決まると考えられます。それでは、マンゴーには果糖がどれくらい含まれているのでしょうか。

『日本食品標準成分表2020年版』によると、マンゴー100gあたりに含まれる糖の量は、ショ糖が約7.3g、果糖が約4.4g、ブドウ糖が約1.3gで、果糖が糖全体の約34%を占めていることがわかります。

では、他の果物はどうでしょうか。


 やはり熱帯果物であるパイナップルを見てみると、ショ糖が約8.8g、果糖が約1.9g、ブドウ糖が約1.6gで、果糖は糖全体の約15%を占めており、バナナの場合は、ショ糖が約10.5g、果糖が約2.4g、ブドウ糖が約2.6gで、果糖は糖全体の約15%を占めています。

 どちらも果糖の比率がマンゴーよりも少ないことから、パイナップルとバナナは、マンゴーのように低温にしても甘みは増さないと考えていいでしょう。


 一方、果糖の割合が比較的多い果物としてはリンゴ、ナシ、ブドウなどがあり、いずれも冷やすとより甘く感じられるに違いありません。

 実際に、いろいろな果物を食べて、常温のときと冷やしたときの甘さを比較してみてはいかがでしょうか。ただし、果物の美味しさは、甘味だけでなく、酸味や香り、色なども影響するので、そのことも忘れずに味わってください。