イチジクのよもやま話

出典:丸果石川中央青果

 

上品な甘さとなめらかな食感

 原産地はアラビア南部の肥沃地帯に原生したもので、太古より地方へ伝わり、シリア・小アジアに渡来したものであるという。さらに西進して地中海の諸島や沿岸諸国に伝わり、8世紀~13世紀ころに中国に、16世紀末にはアメリカに導入された。
 日本には原産地から東進し、中国を経て渡来したという説と、寛永年間(1624年~1643年)に西南洋の種を経て長崎に植え、全国各地に広がったとする説がある。江戸時代には、紫果品と白果品の2品種が栽培され、芸州(広島県)は、その名産地であったという。その後、明治の初期に4品種、明治の終わりから大正にかけて多数の品種が欧米より導入された。栽培が広く普及したのは大正時代からである。
 近年、嗜好の多様化により需要が増大し、水田利用再編対策での転換作物としても注目され、各地で増植された。

世界最古のフルーツ?

 イチジクは世界史上最も古いフルーツです。アダムとイブがイチジクの葉で肌を隠した、あの有名な一節が聖書「創世記」の三章七節に登場します。
 実際、エジプトでは紀元前2000年にはすでに栽培されていたといわれています。

イチジクの名前

 イチジクは漢字で「無花果」と書きます。中国の古書「西陽雑俎(せいようざっそ)」に「花無くして実あり」と記され、「無花果」という字が用いられるようになりました。
 また、1ヶ月で熟すから(又は1日1果ずつ熟するから)一熟(イチジュク、イチジク)となったとする説もあるようです。

イチジクに花はない?

「無花果」と書くイチジク。では本当に花はないのでしょうか?
 イチジクにも花はあります。実は、普段私たちが食べている部分(果実)こそが、肥大した花房(花)なのです。
 初夏、葉の付け根にビワの実のよう花托(かたく=花のつけね)がつき、この中に無数の花をつけます。イチジクを半分に切ったとき、中にあるツブツブの部分がいちじくの花です。花が無くても実るように見えるため、「無花果」の字が当てられるようになりました。

イチジクにまつわる迷信

 俗に「イチジクを庭に植えると子供ができない」といわれます。
 これはイチジクを「無花果」と書くことから「種ができない」=「子孫ができない」という発想から来たもの。
 もちろん、まったく根拠のない迷信にすぎません。


品種
  • 桝井(ますい)ドーフィン
  • 蓬莱柿(ほうらいし)
  • とよみつひめ
  • ビオレ・ソリエス
  • カドタ

選び方

 ふっくらと大きく、果皮にハリと弾力があり、皮に傷のないものを選びましょう。
 全体に色づいて、おしりが開いているものが食べ頃です。

保存法

 いちじくは、大変傷みやすく日持ちがしない果実ですので、できるだけ早めに食べましょう。特に、目と呼ばれる先端部の割れている部分より腐敗が急速に進みます。
 保存する場合は、乾燥を防ぐためビニール袋に入れて冷蔵庫の野菜室に入れておきましょう。食べきれない場合は、シロップで煮てコンポートにしたり、ジャムにするという手もあります。

栄養価

 上品な甘みとやわらかな酸味が特徴のイチジク。たっぷりの果糖とクエン酸が、あの味のもとになっています。食物繊維のペクチンが豊富なので、整腸作用や美容効果が期待できるため、女性にうれしいフルーツです。
 また、「フィシン」というたんぱく質分解酵素を含んでいるので、お肉料理などの後に食べると消化を促進し、胃の負担を軽くしてくれます。まさに食後のデザートにはもってこいです。
 赤い果実の色は抗酸化物質のポリフェノールの一種、アントシアニンで、ガン抑制効果も期待できます。ちなみに乾燥したものは、生薬としても使われています。

食べ方

 皮をむくときのコツは、まずよく洗い、バナナのように軸の方から手でむくと簡単にむくことができます。食べる1~2時間前に冷やすと、より一層おいしくお召し上がりいただけます。生でそのまま食べるのが一般的ですが、アレンジ次第で幅広い賞味を楽しめます。

  • イチジクジャム
    イチジクの皮をむいてつぶし、白ワイン(好みで赤ワインでも可)、ハチミツ、水を加えて弱火で煮る。ドロッとしてきたら火を止め、しばらくさます。最後に冷蔵庫で冷やしてできあがり。
  • イチジクのコンポート
    いちじく…2個、砂糖…大さじ4、ワイン(赤白どちらでも)…カップ2、ミントの葉…適宜
    煮たてたワインと砂糖の中に、皮をむいて切ったいちじくを入れ、7分程煮る。火を止めて味をしみ込ませ、冷めたらお皿に盛って、ミントの葉を飾る。アイスクリームをのせても美味。
  • イチジクの生ハム巻
    イチジクを適当な大きさに切り、生ハムで巻く。レモンの絞り汁をかけてできあがり。
    イチジクと肉の相性の良さを利用した手軽な一品。