青森県でのヘーゼルナッツ栽培の取り組み

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ヘーゼルナッツ収穫成功

青森県平川市にある広船アップルクラブという団体が地域のりんご生産者の所得向上を図るため、土壌病害でりんご栽培が困難な場所や急傾斜地で作業性が劣る園地などに、新作物としてヘーゼルナッツを試験栽培しながら新たな加工品づくりに挑戦しています。

 平川市広船地区のリンゴ農家でつくる「広船アップルクラブ」が同地区で、香ばしい風味とコリコリした食感を楽しめる「ヘーゼルナッツ」の試験栽培に取り組んでいる。土壌病害になったリンゴ畑を活用し、産地化を目指す計画。栽培開始6年目の今年、初めて数十個の実が付き、収穫を無事終えた。関係者は「大きな一歩」と受け止め、来年以降の栽培に意欲を燃やしている。
(長内健)

 農林水産省などによると、ヘーゼルナッツは地中海沿岸から西アジアが原産地で、生産量の約7割がトルコ。生や、よく炒(い)ったものを食用とし、日本ではチョコレートやケーキなど洋菓子の材料として輸入されている。県林政課は、県内での栽培事例について「統計調査をしていないので把握していないが、聞いたことがない取り組み」と珍しがる。

 広船アップルクラブで中心的に栽培しているのが外川薫さん(41)。きっかけはリンゴ樹の根を腐らせる「紫紋羽(もんぱ)病」。消毒してもすぐに菌が戻ってしまう上、畑の土壌改良も経費がかかる。

 長年悩まされる中で、代替作物にならないかと思い付いたのが、日本の山で自生するヘーゼルナッツの仲間「ハシバミ」だった。外川さんは子どものころ、自宅周辺の山でハシバミの実をよく食べ、その香ばしさや食感が強く記憶に残っていたという。「平川市の山にハシバミが自生するのなら、ヘーゼルナッツも育つ風土かもしれない」と考え、栽培に乗り出した。

 5年前、土壌病害のためリンゴの木が育たない園地に「ホワイトフィルバート」と呼ばれる品種の苗木を数本植えた。枝の剪定(せんてい)や草刈りなどの手入れだけで観察を続けてきたところ、今年7月上旬ごろ、成木となった2本の木に直径1・5センチほどの実が数個付いているのを発見した。

 9月上旬まで待って二十数個を収穫。殻の中には一回り小さな粒があり、口に入れるとクルミに似た風味と食感を楽しめた。収穫した実を使ってアップルパイを作り、来年2月に都内で販売する計画だ。

 一方、同クラブは本年度、むつ小川原地域・産業振興財団の助成を受けヘーゼルナッツ6品種の苗木120本を新たに購入した。外川さん以外の会員4人も試験栽培を始めたが、こちらはまだ実が成っておらず、来年以降も地道に管理、観察を続ける。

 外川さんは「栽培方法がよく分からず手探りだったが、数十個の収量は大成功。リンゴ栽培に比べ手間もかなり省けることが分かった。寒暖差のあるこの地域の気候に合っているかもしれない」と話し、実が付いた木と付かない木の分析を進める考えだ。

 同クラブの福士稔代表は、広船地区は平川市内の中でもリンゴの主産地―とした上で「今後もリンゴの栽培が主だが、ヘーゼルナッツも取り入れ、あらゆる加工品の販売活動ができるようになれば」と期待している。