ウドの栽培

出典:小川町 渡辺町

 

生産の歴史的由来

 ウドは北海道から九州まで全国の山地に自生しており、フキ、ミョウガ、ミツバなどと並んで日本原産野菜のひとつです。
ウドの歴史は古く、平安時代から身分の高い宮人の間で食されていたという記録が残っていますが、この頃のウドは少々アクが強かったようです。もともと山菜であるウドをより身近に楽しむために、本格的な栽培が始められたのは江戸時代後期、現在の武蔵野市周辺だったといわれています。
いわき市には、もともとの個性である山菜らしさを残して栽培されている「山ウド」「赤ウド」と、畑に掘られた大きな穴の中に伏せ込んで人工的に全身を軟白化させた「白ウド」の2つがあります。
今でこそ、栽培件数の少ないウドですが、昭和30年代には小川や泉など、水資源の豊富な地域で盛んに栽培されていました。軟白化するのに手間はかかりますが、比較的高価な値がついたため、農閑期の換金作物として重宝がられていました。

土の中で春を待つ、白うど・赤うど。

 土の中で軟白化させた「白ウド」と山のウドの野性味を残している「赤ウド」。この両者を栽培している小川町では、かつて「子どもが学校にあがる時はウドを作れ」といわれるほど、早春の貴重な換金作物として盛んにウド栽培が行われていました。
もともと養蚕を営んでいた農家さんが、ウド栽培に鞍替えしたケースも多く、農閑期の労力を有効利用しながら、一時は仙台から買い付けに来るほどの盛り上がりを見せたウドの栽培も、今では数軒を残すのみとなり、その中でも市場に出荷できる収量を確保しておられる農家さんは、わずか1軒となってしまいました。

白ウドの栽培方法

 まず、収穫を終えたウドの根株 から、古い弱った根を取り除き、5月中旬~6月上旬に畑に定植します。地面から新芽が顔を出したら、株と株の間に野菜配合肥料を施し、草引きをまめに行います。夏から秋にかけてのウドの生育は著しく、「うどの大木」の名の通り、大きいもので草丈が2mを超える頃には、葉が生い茂り畑に入れないほどになります。この時期に、ウドは土の中の肥やしを吸い、茎や葉から太陽の光を取り込み、翌年また良いウドが採れるよう、株いっぱい養分で満たします。
7月下旬からは白い花をつけ出し、その花が熟して紫色に変わる頃になると、茎や葉はその役目を終え徐々に枯れ始めます。

 空気が冷たくなり、お正月を迎える準備が始まる12月下旬、ウドを株ごと土からおこし、茎と葉を根元で切り落とし取り除きます。
こうして養成された根株を、畑の中に掘った長さ10m、幅3m、深さ1mに及ぶ大きな穴の底に並べ、もみ殻や稲藁を敷き詰めて表面をビニールシートで覆います。こうして防寒対策が施されたふかふかのベッドで、ウドの根株は春を待ちます。
3月下旬、シートをめくると真っ白なウドの先端が少しだけ顔を覗かせています。白ウドは皮が軟らかいため収穫は全て手作業で行われます。1メートルの穴を掘り起こし、ウドを外に出す作業は容易ではありません。また長時間光に当てるとたちまち変色し、せっかく手間ひまをかけて軟白化したのが台無しになってしまうため、早朝や夕方の限られた時間帯に忙せわしい作業を余儀なくされます。
こうした大地の恵みと人の手により、1年をかけてようやく香り高い白ウドが収穫されるのです。

山ウドの香りそのままに、露地栽培で逞しく。

 きっかけは親族から食用にとウドを分けてもらったことだったという渡辺町のウド作りは、昭和30年代から始まりました。
ウドの栽培を始めた頃は、良いウドを収穫するまで四苦八苦しましたが、もともと篤農家であった栽培者は、ウドをよく観察し、早生、中間、晩生種を見い出し、地柄に合わせた栽培法をよくよく研さんし、現在の露地栽培を採用するに至りました。
最初は米袋1袋分程度だった数本のウドが、株分けにより年々増え、今では優に千株を超え家の周囲の畑を埋め尽くしています。

栽培方法

 植えっぱなしの根株から、春先に新芽が伸び20㎝ほどになったところを、根元で切って収穫します。
収穫後、特に根株を掘り起こすことはせず、そのまま生長させます。草丈が大きくならない内は、分岐した枝先の新芽を摘み、お浸しや天ぷらにして食べることもきます。春先のウドの香りそのままに 7 月くらいまで楽しめます。先述の小川町のウドが軟白化なら、このウドは緑化というのが近いかもしれません。

 ウドは、夏の間に生長を遂げ、言葉にある通り「ウドの大木」と化します。10月に入り、秋の気配とともにウドの茎葉が茶色くなってきたら根元で刈り、1 回目の土寄せを行います。もともと、休耕地を荒らさないために始めたという経緯もあり、栽培にかける手間はさほど多くはありませんが、長年植えっぱなしの株は肥えており、脇芽も出ているため、作業は全て鍬による手作業で、これは想像以上に重労働です。

 3月になったら再度土寄せを行い、この際野菜配合肥料を施します。この追肥は、収穫前の発芽を助けるためというよりは、収穫後の株の生育を促すためのものです。
茎葉が畑を覆い尽くしている間は畑に入ることができないため、追肥はこの時期に済ませてしまいます。
根株が長年植えっぱなしとなることで、中には根株が疲労してウドが細くなったり、一つの根株から出る新芽の数が減ってしまうこともあります。その場合は、一度根株を掘り起こし、新芽が育っている良いところのみを残して土に戻します。根株の植え替えを行った場合は、1~2年収穫を控え、根株を十分養成し、3年目くらいから収穫するようにします。根株の植え替えの目安は6~7年くらいです。

引用:Asahi