エタノールがトマトの高温耐性を高める

出典:理化学研究所

 

-農作物を高温ストレスに強くする技術ー

 理化学研究所(理研)環境資源科学研究センター 植物ゲノム発現研究チームの関 原明 チームリーダー、戸高 大輔 研究員、筑波大学 生命環境系の草野 都 教授らの共同研究グループは、トマトへのエタノールの投与により、高温ストレス耐性が強化されることを発見しました。

 本研究成果は、農作物の高温耐性を強化する技術の開発に貢献すると期待できます。

 今回、共同研究グループは、トマトの幼植物体に、安価で入手しやすいエタノールを投与した後、高温ストレス環境下に置きました。その結果、高温ストレス後の生存率が向上することおよび高温ストレスによる果実の生育ダメージが低減することを見いだしました。遺伝子発現や代謝産物の量的変化を網羅的に解析したところ、エタノールの投与によって、1)LEAと呼ばれるストレス応答性遺伝子の発現量が増加すること、2)グルコースやフルクトースなどの糖類が蓄積すること、3)増加すると生体にとって有害である活性酸素種の除去に関わる遺伝子の発現量が増加することが明らかになりました。これらの作用機序により高温ストレス耐性が向上する可能性が示唆されました。

 本研究では、安価で入手しやすいエタノールをトマトの実験用モデル品種であるマイクロトムに投与すると、高温ストレス耐性が向上することを発見しました。  
 本技術は、トマトの栽培品種をはじめとする作物の生産現場に応用されることが期待できます。また、エタノール事前投与の時期や方法を検討することにより、高糖度トマトの栽培技術に応用できる可能性があります。