不耕起栽培 メリット・デメリット、やり方

出典:マイナビ農業

 

不耕起栽培とはどのような農法?

 不耕起栽培とは、文字どおり「田畑を耕さずに作物を栽培する農法」のことです。
 20世紀のアメリカでは長い間大型機械によって農地が耕されてきましたが、そうやって繰り返し耕されることにより、健康な土壌に必要な土壌構造や保水性が失われ、砂漠のような土地になっていました。それを化学肥料と農薬に依存することでなんとか栽培していましたが、特にハリケーン地帯では農地の土壌侵食がいよいよ深刻化して農家を悩ませていました。そんな状況の中で解決法として登場したのが不耕起栽培でした。

 これまで当たり前とされてきた「耕すこと」が実は畑の生態系を破壊し、その土地が本来持っている生産力を損ねることが研究でわかってきたのです。

 また、これまでの耕す農業は地球温暖化の大きな要因とされてきましたが、不耕起栽培は大気中のCO2を減らし、地中に炭素を貯蔵できる農法であるという研究も発表され、期待が高まりました。

不耕起栽培の三大原則
  • 土をかき乱さない
  • 土を覆う(マルチングする)
  • 混植する(多様性を高める)
土をかき乱さない

 第一の原則は、かく乱を最小限に抑えるというものです。耕さないとはいっても除草や種まき、苗植えなど、どうしても土に手を加える必要がある場合も。その際に気をつけたいのが、なるべく土壌へのダメージを最小限にしたいということです。苗を植える時には小さく穴を掘る、種まきの際には表面だけを刈り払いする、などの工夫をします。

土を覆う(マルチングする)

 
 第二の原則は畑を裸地にしないということです。刈り取った草や落ち葉など、有機物を畑に積んでおくか、あるいはカバークロップ(被覆作物)と呼ばれる地面を覆う植物を常に生やしておくことが重要です。土をむき出しにすると日射や風雨で土壌構造が破壊され、保水力や保養力が著しく低下します。逆にバイオマスを与えることで有機物が土壌生物・微生物のエサとなり豊かな土壌が育まれます。

混植する(多様性を高める)

 第二の原則は混植です。一つの作物だけを植えるのではなく、複数の作物や雑草を一緒に生やすことで生物多様性が増して生態系が安定するといわれています。多様性は作物の病害虫への抵抗力を高め、農業をするうえで経済的な安定にもつながるというメリットがあります。また年間を通して作物を栽培し続けると自然と第二の原則も達成することができます。

不耕起栽培のメリット
劣化した土壌を再生できる

 最も大きなメリットは劣化した土壌を再生できることであり、冒頭でも書きましたがこれこそ不耕起栽培が広まった理由です。畑を耕す→土が劣化する→肥料・農薬を入れる→保養力・保水力が失われる→土が固く締まる→耕すという負のスパイラルから抜け出し、逆に砂漠のような土壌を、団粒構造がしっかり形成されたふかふかの土へと再生することができるのが不耕起栽培の最大のメリットです。

経済効率性が良い

 耕す農法は基本的にトラクターなど大型の機械の使用を前提としています。そのため機械の維持費や燃料代がかかります。ですが不耕起栽培の場合そういった大型の機械を導入する必要がないので、大幅なコストカットになります。また、肥料や農薬の使用を抑えることができるので、その分のコストも減らすことができます。
 もちろん草を刈る、のせるといった労力は発生しますが、上記のコストと比較すると経済効率性が良いといわれています。

浸水性・保水性が向上する

 耕している通常の畑の場合、雨の後は土がむき出しのところがぬかるんだり、水がたまったりすることがあります。ですが不耕起栽培の畑では浸水性が良くなり、また通路は雑草を生やしておくので雨の後でも基本的に作業ができないということがありません。
もちろん地形や土質によっては水はけが悪い農地もありますので、その場合は排水できる溝をきるなど工夫が必要になります。

 乾燥がひどい夏場でも草マルチをしてある畝は保水性が高く、雨水のみでの栽培が可能な場合も。また、散水の頻度を格段に落とすことができます。

誰でも始めやすい
炭素貯蔵量を増やせる
不耕起栽培のデメリット
  • 作物が取れ始めるまで時間がかかる
  • 雑草対策への労力がかかる
  • 経営の転換が必要
不耕起栽培の基本的な始め方
  • 土作り
  • 畝立て
  • 種まき・定植
 日本では不耕起栽培の農地は全体の0.01%にも満たないといわれています。
 普段から見聞きしない分すぐには飲み込めないという方も多かったかもしれませんが、中身はいたってシンプルです。
 土をかき乱さない、常に草で覆う、そしていくつもの種類の植物を生やしておく、この三原則を守るだけで済みます。