リンゴ樹 雑草が守る

出典:Web東奥

弘大ムラノ研究員ら食害調査

弘前大学農学生命科学部のムラノ研究員らの研究グループが、ネズミによるりんごの木の食害を防ぐ手掛かりにしようと、冬の間のりんご園でハタネズミが何を食べているのかを調べた。一般的に雑草として取り除く事が多い「ギシギシ」が、晩冬から早春にかけてのネズミの主要な餌となって、リンゴの木の食害を減らしている可能性が示された。ムラノ研究員は「ギシギシ」を根こそぎ取り除かずバランスよく許容する事で、リンゴの木を守ってくれるかも知れない」と語る。

リンゴ栽培ではギシギシは栄養を吸収する力が強くリンゴの栄養を奪うため取り除くべき-と言うのが定説。背丈も高く伸びる為ネズミが天敵から身を隠しやすくなり、農家の間では「ギシギシがあるとネズミが増える」とも言われてきた。

ムラノ研究員らのグループは、2018年11月から21年5月にかけて8つのリンゴ園に罠を仕掛け、ネズミの糞を採取、集めた60サンプルのDNAを解析しネズミがどの位の割合で何を食べているか調べた。

冬季ネズミ根の需要な主要な餌

ギシギシ


その結果、冬の始まりには、地面に落ちたリンゴの実やシロツメクサなど様々な植物を食べていた。
実や草が無くなる雪解けの頃は餌の種類が少なくなり、ほぼギシギシかリンゴの樹皮の二択に。ギシギシががほとんど無い園地ではリンゴの樹皮を食べるが、ギシギシがある園地ではギシギシの方をたくさん食べていた。

今後は園地の植物量、ネズミの数、積雪深等のデータも組み合わせて調査と進め、実際の食害との関係や、どのくらい植物を残すべきかのバランスなどを探る考え。この成果は7月18日付で生物学の国際誌に掲載された。

ムラノ研究員は「リンゴの木の食害を防ぐには、ネズミの数を減らそういう考えが主流だったが、ネズミも必死で生きているのでそれだけでは難しい。春から夏は草を刈るけれど、冬には餌になる草を残す「北風と太陽作戦」もひとつの手かもしれない。」と話した。