人気急上昇中の“山菜の女王”
 農家が教える「コシアブラ」の育て方

ライター:鶴 竣之祐
連載企画:農家が教える栽培方法


— 分根での増殖方法 —

採種した種からの育苗や、取り木、挿し木という手法を使った増殖が推奨されていることもありますが、筆者は家庭菜園でのそのような手法は成功率も低いためおすすめしません。
ここでは根付きがよく、初期成育に優れた“分根”という方法を紹介します。

※ コシアブラを採取する際は、必ず土地の所有者に許可をとって下さい。また、国立公園などでは採取が禁止されています。

3月頃に山に入り、お目当てのコシアブラの木の根元を見てみると、“ひこばえ”と呼ばれる若木が地面から伸びているのが確認できるかと思います。栄養状態によっては生えていないものもあるかもしれませんが、ある程度大きな木であればすぐに見つかります。
その芽の根元を丁寧に掘り、根ごと親株から切り離して掘り上げます。掘った若木についている根が多ければ多いほど初期成育は順調になります。
それを持ち帰り、水につけておけば2~3週間ほどで展葉(葉を広げること)をはじめますので、それから植え付けをすると良いでしょう。

ひこばえが見付からなかった場合でも、地中の根だけを切り取って掘り上げれば、根だけでも増殖できます。
直径1センチ以上の根を長さ10センチほど切り取り持ち帰りましょう。この場合は、できるだけ若い木(1~3年目くらいの木)が採りやすく、生育も良いです。

持ち帰った根は、プランター等で鹿沼土や赤玉土、山土などに深さ2~5センチ程度、株間15センチで埋め込み、新聞紙やわら、落ち葉などを被せます。乾かないように水やりをしていれば、1~2カ月で発根し、発芽が確認できますので、苗木の完成です。
春に出来た苗木は、その年はポットでの育苗に努め、落葉後の12~2月に植えつけましょう。
場所は選びません。日当たりが良いに越したことはないですが、半日陰でも充分生育します。

コシアブラの剪定(せんてい)方法

コシアブラは収穫も剪定もせずに育てると、10メートルの高さにまで達するという植物です。
しかし、収穫は主に頂芽を採ってしまいますので、栽培しているものであれば放置していてもそこまで大きくなることは少ないでしょう。
高くなりすぎないために剪定する、ということもありますが、剪定することで枝の数を増やすことができます。枝の数が増えるということはすなわち頂芽の数を増やすことにつながりますから、積極的に剪定しましょう。
収穫終わりの5月下旬頃に枝の全長の1/5程度で切り戻しておくと、最も栄養が集中する頂芽にいくはずだった養分が分散され、枝を多く確保できるようになります。

いろいろと書いてはおりますが、コシアブラはとても強い植物で、病害虫防除のための農薬散布などがほとんど必要ない栽培容易な品目です。春を彩る山菜を自分の手で栽培してみるのもまた一興でしょう。

出典:マイナビ農業