ゼンマイの増やし方

出典:石川県林業経営課

 

林床の活用による山菜等の栽培技術

 人工繁殖の方法

(1)分株移植栽培法
 山野に自生する来生の株を1株に分けて移植する方法で具体的には次のような方法で行なう。

移植の適期

 シダ植物は四季いつでも移植できるが、最適の時期は入梅期である。この時期は、滞水による根腐れを起こさないような排水対策以外に、例えば寒暖に対する措置など他の時期に必要とする手数を要しない。
 自生株の中から形質が良く、勢いのよいものを選んで、その株の少し離れた周囲をていねいに堀る。この場合、できるだけ細根を沢山つけるようにして堀り採るようにする。
 また、持ち帰った株はすぐ植えることが必要である。なお、ゼンマイの生育停止期(10月中旬-3月中旬)に移植する場合、融雪時期では気温、地温が急上昇したり、作業の適期を失することもあるので、この場合、秋期菓が枯れてから行なうほうがよい。

(2)胞子繁殖栽培法
 寒天を培養基とする→純粋培養又は水ゴケ等を利用する粗培養による方法である。
 まず、ゼンマイの胞子を用意しなければならないが、胞子は完熟してあまり日時の経過しないものを選ばなければならない。特にゼンマイはシダ類の中でも寿命が短かく、一般的には常温で1週間と言われている。
 山採りの場合は、完熟して胞子が落下しないうちに採る必要があり、胞子葉の外観が半分以上緑が残っている状況のとき採れば確実である。
 採った胞子葉は、紙袋等に入れ日陰干しをし、乾いてから軽くもみ、胞子のうから胞子を飛び出させる。
 なお、紙袋の中の茶色の小粒は胞子のうであり、胞子は緑色の粉状を呈し、使用する場合はこの胞子のうやゴミを取り除いて胞子だけとする。
 まき床は、へゴ材の小さく切ったものや、イワヒバの根茎を適当に切ったものが使われることがあるが、一般的には水苔が無難である。(栽培試験ではバーミュキライトが良く発芽するものの、その後の生育では水苔が良好であった。)異物を除去した新鮮な水苔を素焼鉢につめるが、ゼンマイの場合は、やや固くつめて湿気を多くして鉢のヘリが5cⅡlほど残るようにする。これをガラス蓋(シャーレ)で覆い、そのまま30分-1時間蒸気滅菌を行なう。滅菌を終ったものは、自然に冷却させ、その後蓋をとり水苔の上に用意した胞子を播く。播き方はあまり落とさぬように、むしろ少な目にして脱月旨綿に胞子をつけ、鉢のヘリに軽くたたいて落とす。播き終ったならば、再び元のガラス蓋で覆って、別に用意した水盤の中に浸す。ガラス蓋は、雑物の入るのを防ぐと共に、蓋の裏面に出来た水滴が、やがて発生する前葉体の上に落ちて受胎時の媒体として役立つ働きをもつ。
 胞子を播き終えた鉢は、直射日光を避け日当りの良い所に置く。胞子の発芽は播いてから10日ぐらいから始まり、1か月以上になるとぼつぼつ緑色の前葉体が見え、早いもので5か月くらいで第一菓を生じるものもあるが、普通1か年を要する。

栽培適地

 ゼンマイの適地としては、(土壌が腐植質に富み、排水が良好で保水力のあるところ、②西北、北面の緩傾斜地、③南西側に日陰木のある場所、④落葉広葉樹で疎林状況のところなどの土地が適当であるが、一般的には山裾の傾斜畑や沢筋の畑地などが理想的である。
 県内の栽培状況を見ると畑地ないしはキリ植栽地に多く植栽されている。しかし、中には山林開墾跡地の表土が剥ぎとられたところや火山灰土のところの直射日光の当るところに植栽しているものもあるが、これらのところは、他の地域に比較し生育が劣るものの枯死することなく生育している。 
 このような状況からみてゼンマイの環境に対する馴化性は大きいものと考えられる。とはいうものの、適地に植栽されたものはその後の生育が良好であることから、適地適作を心掛けなければならない。

植付け時期

 シダ類はいつでも移植が可能であるが、最良の時期は、新薬が展開する少し前の3月下旬から4月上旬である。また、新案が伸びきってすっかり全体が整ってくる5月下旬から6月初旬(入梅前)にかけても根づきがよい。

 その他、葉が黄色づく10月中旬から11月上旬に採取し移植することもできるが、この時期は、寒さを迎えることから敷ワラや落葉で覆ってやる必要がある。
採取に適さない時期は、真夏時、冬期聞及び斯業が伸びている生長期である。