融雪剤混じりの雪を 畑に捨てないで

出典:日本農業新聞

 

 「畑に雪かきした雪を入れられて、困っています」

 2月上旬に関東一帯に大雪が降って数日後、東京都内の50代男性から「農家の特報班」にそんな相談が届いた。道路を雪かきした後、隣接する畑に無断で捨てていくことが長年続いているという。「私有地なのに」と理解のなさに憤るとともに、道路には融雪剤がまかれているため「土や作物は大丈夫だろうか」と不安を抱えていた。関係各所を取材し、影響を探った。

注意しても、また

 相談が来た8日時点で雪は解けていたが、2014年の大雪の際の写真が男性の手元にあり、それを送ってもらった。畑の内側は雪が降り積もったような状態だが、道路に面した部分は不自然に雪が積み上がっていた。

 実際に畑に雪を入れる人に遭遇し、「やめてほしい」と訴え、止めたこともあった。それでも大雪が降る度に雪が入れられることが続き、今年もまた繰り返された。

 道路の雪はどう処分すべきか。男性の畑がある市に聞くと「歩道の隅など邪魔にならない場所に集めてほしい」と担当者。田畑など私有地に無断で入れるのは「やってはいけない行為」と強調する。

土壌「心配ない」

 この市は住民に塩化カルシウムが主成分の融雪剤を配っている。ある融雪剤メーカーは「作物があれば融雪剤混じりの雪でも枯れる可能性がある」と説明。ただ、土壌への影響は分からないという。

 土壌管理に詳しい東京農業大学の後藤逸男名誉教授に見解を尋ねると、「普通の除雪でまかれる程度なら心配ない」との返答を得た。塩化カルシウムはカルシウムと塩素の化合物。カルシウムは土壌のpHを上げるために施用することがあり、悪影響を及ぼすとは考えにくい。塩素も雨ですぐに流れるため、土壌に残らないという。

 記者は、投稿者の男性に、取材で得た情報を報告。融雪剤によって土壌に悪影響が及ぶ可能性が低いことを伝えると「それならひと安心」と話した。

 ただ、男性の畑に入れられた雪には、砂利やごみが含まれており、困っていることには変わりない。男性は「畑は住居と同じ大事な土地。雪を入れてはいけないと広く知ってほしい」と訴える。

 農水省は、道路に積もった雪を農地に入れられてしまった場合、「道路管理者がどこかを確認し、相談してほしい」(農業環境対策課)としている。

他人の土地に勝手に雪を捨てるのはダメです。
どんな理由があろうとも。