荒地に咲いた“小さな太陽”~キクイモ~

 

 お盆を過ぎるようになれば、そろそろ寝苦しい熱帯夜と、どこかかみあわない家族サービスのストレスから解放されていい時分。あなたの心を慰めるために、道ばたで、ぽこぽこと、小さな太陽が生まれてくる頃合いでもある。

 あらゆる雑草がひしめく荒地は、多くの人がひどい痩せ地と思い込んでいる。けれども8月下旬から9月ごろになると、ここに忽然と、小さなヒマワリみたいな花がふわりと咲き誇る。キクイモの季節だ。学名をHeliantus tuberosusといい、ヘリアンツスはギリシア語で「太陽の花」。園芸種として庭園に飾れるほど華麗であるが、あとで始末に負えなくなっても、私は知らない。強敵である多くの雑草を打ち負かし、誇らしげに花を咲かせ、あげく小さなイモをモリモリとこさえる。熾烈な競争社会で、どんな財テクで成功しているのか、正確なことはまるで知られていない。人間はこれに目をつけて栽培したが、食材が豊かになるにつれて畑から消え、彼らは静かな野生を満喫することになった。

 ここに時代の潮流が押し寄せる。5年ほど前であろうか、農協でこの雑草の根塊が売られているのでギョッとした。いまではサプリメントから苗までが売られている。イモのくせにデンプンはわずかでタマネギなみに低カロリー、不足しがちな亜鉛と料理のレシピも豊富。イヌリンという物質がとても多く含まれ、これが血糖値を下げるということで、ひさびさに畑に戻されて大量出荷されている。

 ユニークなことに、畑に戻されたとたん、連中は連作障害を起こす。年々、イモが小さくなるのだ。厳しい荒地では何年だって元気に育つ。つまり、豪勢な肥料を与えた土地よりも、荒地の生命世界のほうがよっぽど豊かであることを証明してみせたのだ。
【参照先不明】

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