山菜コゴミ 省力栽培で休耕田活用

 

18.jpg 高野山やその周辺に自生する山菜「クサソテツ(=コゴミ)」が、休耕田での栽培に適しており、手間いらずで簡単に育てられることが、県林業試験場(和歌山県上富田町)の実証実験で分かった。近年、耕作放棄地が増加しており、歯止めをかける農作物として農業関係者が注目している。同試験場は「山菜特有のあくがなく、湯がくだけで食べられる。農薬をまったく使わず作れるので、安全な自然食材としてPRできる」と話している。

 高齢化と過疎化の影響で近年、県内各地で耕作放棄地が急増している。県によると、県全体の耕作放棄地率は12・11%だが、紀南地方では太地町70・72%や旧串本町69・44%などをはじめ、20%以上の地域が少なくない。同試験場は、この状況を少しでも緩和しようと、労力とコストが掛からない山菜の省力栽培に目を付けた。コゴミ以外にはイタドリ(ゴンパチ)やモミジガサ、マタタビなどについても研究を進めている。

 同試験場は2005年12月から3年間、コゴミの自生地が多いかつらぎ町の農林家16戸、伊都振興局林務課と協力して、同町の休耕田で実証実験を行った。この結果、野菜作りに不向きな日当たりの悪い湿潤な遊休地でも育つ▽耕運や畝立ての必要がない▽病害虫に強く、農薬、肥料、水を散布しなくてもある程度の収量が見込める▽子株の繁殖力が旺盛で地下茎からの育苗が容易▽毎年苗を植えなくても育ってくる―など多くの利点のあることが分かった。

 さらに研究を進め、よりよい育苗方法や1年を通して収穫できないかなどを調べる。昨年からは田辺市秋津川の農家が、同試験場の協力で試験導入しており、今春に初収穫する。

 同試験場の坂口和昭研究員は「近年、農家が直接出品できる産直店が増えており、少量の栽培からでも始められる。熊野古道近くの民宿などで料理の食材に使って、観光客に特徴ある一品としてPRしてもらいたい」と話している。

【植栽して3年目のコゴミ。1メートルほどに成長している(和歌山県かつらぎ町で)】
(2009年02月02日更新)

 

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