野菜を食べる魚

出典:TBS NEWS DIG

 

「野菜を食べる魚」が食糧危機を救う

飼料高騰や資源不足…“野菜を食べる魚”の養殖で環境負荷の軽減を目指す

世界の天然の魚の約34%が数を維持できないほど乱獲されている状態で、今後、魚の養殖がますます必要になってきます。しかし、養殖のエサは生の魚や魚粉が中心で、たとえば養殖のブリは1kg太らせるのに7~10kgの魚が必要で資源不足が懸念されているのです。

 「これが海から取ってきたアイゴの幼魚と成魚ですね。エサの種類を変えて飼ってみることで味がどう変わるのか」

 アイゴは独特の臭みがあり市場ではほとんど流通しない未利用魚ですが、魚では珍しく海藻なども好んで食べます。そこに目をつけ、魚粉ではなく廃棄予定の野菜で育てることができないか実験することにしたのです。

 さらに独特の臭みはエサが原因とみて、水槽を3つに分けて、それぞれエサを「魚粉入り」・「植物性たんぱく質」・「野菜」にして味と臭みの違いを比べることにしました。アイゴには50日間それぞれのエサを与え続け、後日、育ったアイゴを食べ比べます。

エサによって味に違いは出るのか…
食べ比べた結果は?

 9月末、再び近大の研究所を訪れた島村さん。野菜を食べてくれているのか確認しに来たのです。

 そこには、近所の青果店からもらった廃棄予定の白菜をついばむアイゴの姿がありました。次から次へと勢いよく食べています。

 「キュウリとかブロッコリーとか緑の塊の野菜もすごく好きで、この前はメロンとかちょっとにおいがあるシソやバジルもきれいに食べました」

 では、肝心の臭みに変化はあるのか。50日間野菜を食べ続けたアイゴをその場でさばき、内臓のにおいを確認すると…。

 「においは全然ないですね。内臓脂肪が本当に少ないですね」

 続いては味の食べ比べ。それぞれのアイゴを刺身にします。見た目ではすこしの違いはあるようですが、果たして味はどうなのでしょうか。まずは

— 魚粉で育てたアイゴ —

から食べることに。

  (島村さん)「すごく弾力感がありますね」
 (料理人仲間)「脂も結構のっているね」

次に、

— 植物性たんぱく質を与えたアイゴ —

は…。

  (島村さん)「脂が多い。養殖しましたという感じがでている。ちょっと養殖のタイに似ている」
 (料理人仲間)「でも脂臭さみたいなものはないですね」

 どうやらエサによって味に違いが出ているようです。

— 野菜で育てたアイゴ —

はどんな変化があるのでしょうか。

  (島村さん)「全然味が違う。甘いというか」
 (料理人仲間)「魚のちゃんとした味がする気がする」
  (澤田教授)「全然違うぞ、やった!」
 (料理人仲間)「痩せていたからちょっと期待感があんまりなかったけれども、食べてみたら味的にはおいしい」
 (料理人仲間)「これが一番うまいかも」

 なんと独特の臭みが消えておいしい白身魚に育っていました。この結果を受け、来年の夏にも店で提供できる見通しがたちました。

未利用魚で敬遠されてきたアイゴで
未来の食料危機を救う