ヤブツルアズキ

出典:野食ハンマープライス

 

アズキよりその原種
「ヤブツルアズキ」の方が僕は好きです

ヤブツルアズキはアズキの原種と呼ばれているものの一つで、全国の明るい林縁や草原に生える。
ここでは3m以上に成長したオオブタクサが群落を作っており、その縁に弦を絡ませて生育していた。

葛粉の原料になるクズ、大豆の原種と目されるヤブマメやツルマメと比べるとヤブツルアズキはややまれだという。
もちろん、大量に群生しているのを見たのは初めてだ。

そのときはまだ熟していない果実(さや)が多かったので、2週間後に改めて現地に赴いたところ、いい感じに完熟したものが大量に採取できた。
アズキの果実と比べても違うのは大きさくらいで、本当にそっくりである。
当然、種子(豆)も、この通り、アズキを半分くらいの大きさにして色を濃くしただけに見える。

— ヤブツルアズキでぜんざいを作ってみた —

群落を破壊しないように注意しながら、果実と種子だけを丁寧に採取していく。
完熟しているものは採取の際に鞘がカラスノエンドウのようにはじけてしまうので、ビニール袋で包みながら収穫する。

未熟な果実が少し混じってしまったが、ものの20分ほどで中サイズのジップロックが満タンになった。
山菜と比べると種子採取は罪悪感が薄いのでありがたいね。
もちろん節度は守りますが。

持ち帰ってきた果実はよく乾燥させ、種子を取りだす。

野生の豆には必ずと言っていいほど害虫がついている。
とくにこれだけ小さくても、アズキゾウムシのようなコウチュウ類やアズキノメイガは大量についているので、取りだした種子に紛れてしまわないように十分注意する。

取りだした種子はさらに陰干しし、虫がついているものや「しいな」を目視で取り除く。

食べる段になったら、種子を水に浸し、浮き上がってくる未熟種子やしいなを捨てる。

多めの水とともに火にかけ、中火で一度沸騰させる。

その後、湯を捨てて水気を切り、流水でさっと洗ってもう一度3倍量程度の水を入れ、火にかける。
弱火でことことと煮ていくと、水気が減っていくと同時に種子が水を吸ってふくらみ、ふつうのアズキ(生)と同じくらいのサイズになる。

30分ばかり煮ると、指先で軽くつぶせるくらいの固さになるのでここで砂糖を投入。
ほの甘い程度に味付けをして、とろ火でかき混ぜながらよく煮ていく。(アクは軽くとる)

塩を二つまみほど入れて、水気が無くなってきたら追加の砂糖を投入。
好みの甘さになるように練りながらゆっくりと加熱していけば、ヤブツルアズキあんこの完成。
種皮が厚くつぶれにくいが、柔らかく煮上がった。

ここに適宜熱湯を入れ、焼いた餅を投入すれば…

ヤブツルアズキぜんざいの完成!

煮ているときの香りは完全にアズキのそれだったので、味はけっこう期待できるのではないだろうか…

ホクホクとした食感、香り、すべて完全にアズキと一致する。
違うのは皮の分厚さぐらいだが、これが逆にプチプチ感と野性味をもたらしていて、非常に心地よい。

僕は実はこしあん派なのだが、これくらい粒感があるとアズキの粒あんよりもずっと食べやすい。
はじめはちゃんと裏ごししようかと思っていたのだが、ヤブツルアズキでこしあんを作ると捨てる部分が多くなってしまう以上に、この食感が無くなってしまうのがもったいなさ過ぎるので止めた。

 

ぶっちゃけアズキより美味くないかね幼少時、僕はあんこが苦手で、皮の風味や豆臭さを忌避する中でこしあんの存在を知り、徐々に好物となっていった。
大人になるとようやく粒あんも美味しく食べられるようになったのだが、それでもあの皮の食感を好きになることは無かった。

そんな僕が美味しいと感じるのだから、ヤブツルアズキの美味さは相当なものではないかと思う。
むしろ皮が美味いです。
これがただで採れるなんて…ホントにいいのだろうか?

来年は収穫した種子を庭のプランターに蒔いてやろうかな。
グリーンカーテンにもなるし、ひとシーズン通して収穫すれば1回分のぜんざいにはなるだろう。