2年物の若芽と根のてんぷらがおいしい

 

行者ニンニク名人 小林幸雄さん
 昭和8年生まれ
南箕輪村田畑 在住

2年物の若芽と根のてんぷらがおいしい

 人さまが「やい、行かじゃい!」と言えば「ほじゃ、行くか」と応えるほどの山好きだ。山歩きの楽しみは山菜採りにあり、特に行者ニンニクで仲間との一杯が趣味だった。33年間勤めた乳業会社を定年退職後も、山歩きを続けた。しかし、山で行者ニンニクをただ摘んでくるだけでなく、自分で種を蒔いて増やしたいと思うようになり、増殖が難しいとされる実生栽培に挑戦した。

 まずは、お盆の頃に山からギボを採ってきて、転作田に蒔いてみた。「いっそら、生えなかった」「生えない、生えない」といっては、試行錯誤を続けた。育苗箱やハウスもやってみた。結果がでないまま藪の下に捨てることを、何年も繰り返した。

 転機は、「ねぎの仲間だから、水分がいるのでは?」という家内のアドバイスだった。水に浸してから蒔いたら、発芽した。8月に山から熟した種を採ってきて水槽に浸し、それを蒔けばよいことがわかった。こうやって蒔けば生えるのかと分かったので、これを順に増やしてきた。

 栽培の手順は、育苗箱から始まる。かつてキノコをつくった育苗箱に腐葉土と山土を10センチ敷き詰める。山土は砂の混じらない赤土を使う。ただし土だけだと凍みあがってしまう。ここで2年間大きくしてから、3年目の秋に転作田の圃場へ定植する。さらにもう一度圃場を移し替えることで、苗に勢いがつく。

 行者ニンニクの苗を、初めて自宅へ植えたのが30年前だった。実生で種から栽培の研究を10年かけて、ようやく栽培できるようなった。播種から収穫まで5年から8年くらいかかる。根気のいる作物だ。

 村にある直売所では、8年物の成苗7、8本を一鉢にして500円で販売している。また味工房では味噌漬け、しょうゆ漬けなどの加工品も出している。家庭の調理法には和え物、おひたし、ギョーザの具などがある。お勧めは、冬場に2年ものの若芽と根のてんぷらだ。これを多くの人に味わって欲しいと願っている。

 簡単にもうかる作物ではないが、南箕輪村での特産化に向けて、今後も仲間とともに生産・販売の努力を続けていこうと考えている。
【参照先不明】

 

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