出典:マイナビ農業
ブルーベリーと出会ったのは、36歳のとき。農業について学ぶため、さまざまな作物を勉強していたところ、当時の組合長から声をかけられ、ブルーベリー栽培に取り組むことになった。
アメリカ現地視察で確信!! 日本の気候や土壌に適しているのは、セオリーとは真逆の“ど根性栽培”
セオリー通りに栽培したにもかかわらず大きな失敗となってしまったが、その後、江澤さんはブルーベリー栽培の本場、アメリカ視察の機会を得ることになる。
「栽培の現場を見て、日本で失敗した理由がよくわかりました。日本と比べて、アメリカは乾燥している。雨が降らないんです。だから、かん水施設を作ってしっかり水やりをする必要があった。それに土壌の質も悪い。多量の施肥が必要な理由もそこにありました」
江澤さんがこれまで踏襲していた栽培方法は、アメリカの乾燥した気候や肥料分のない土壌に最適化された栽培法だった。一方、日本は肥沃(ひよく)な土壌で雨も適度に降る。従来の栽培法では水分も肥料分も多過ぎたのだ。江澤さんはそこから研究を重ね、日本の環境に適した、肥料も水も必要以上に与えない“ど根性栽培“を生み出した。
基本的な考え方
- 地面に直接植える(ピートモスを使わない)
ピートモスなどの資材を使わないことで、大地に直接根を伸ばし、強い木ができる。 - 植え付け後、水やりをしない
水やりをし過ぎることは、根腐れにつながる。株元を竹チップなどで覆い、乾燥を防ぐだけで十分だ。 - 肥料はたくさんやらない(時間をかけて木を大きくする)
肥料は年に1度(冬)、菜種かすをみそ汁のおわん1杯分で良い。肥料をたくさん与えて素早く成長させるのではなく、3年ほど時間をかけて、強い根をつくる。 - 農薬を散布しない
もともとブルーベリーは樹勢が強く、病害虫に強い。江澤さんの農園では、シンクイムシが出ることはあっても、木が枯れることはないという。神経質にならないことが大切だ。
植え付け手順
-
植え付け地を決め、穴を掘る
畝間3メートル・株間2メートル(10アールあたり166本)をとり、植え付け穴を掘る。
植え付け穴は、縦横80センチ・深さ60センチとし、土を戻しながら株を植え付ける。
植え付け地が柔らかい場所では、直接クワで穴を掘り、そのまま植え付ける。 -
pHを調整する
江澤さんによると、ラビットアイ系の適正pHは5.8前後だという。
みそ汁のおわん8分程度の硫黄をふりかけ、pHを調整しよう。
pH6.0以上の場合は、植え付け地の土と硫黄を混和すると良い。 -
菜種かすをまく
次に肥料として、菜種かすをみそ汁のおわん1杯分、施肥する。
菜種かすは暖かい時期にまくと窒素飢餓につながる恐れがあるため、必ず冬季に施肥すること。
“ど根性栽培”では、1年に1度だけ施肥をする。その他、細かな追肥などはしない。 -
竹・ウッドチップでマルチングする
土壌を乾燥させないことが、“ど根性栽培”のポイント。
施肥を済ませたら、竹チップやウッドチップを10センチほどの厚さでマルチングしよう。
江澤さんによると、マルチ材にはもみ殻類があるが、竹チップが一番保水性が良いという。
“ど根性栽培”の注意点
- “ど根性栽培”が推奨するのは、ラビットアイ系品種。暖地でもよく育ち樹勢が強く、収量も多い。実も大きく、熟すと柔らかく甘くておいしい。ハイブッシュ種も良いが、pHを4.5以下にすることが必要。
- 植え付け後に水やりをしてはいけない。水分量をおさえることで糖度の高いおいしいブルーベリーになる。
- 3年かけてゆっくり木を育てること。時間をかけることで、より強い木に育つ。
- 2年目以降、施肥をする際は、以前マルチングしたチップを、熊手でいったん外すこと。
ブルーベリーは日当たりが良く、水はけがいい土地を好む。江澤さんによると、もともと果樹園をしていたようなところであれば、ブルーベリーは十分育つとのことだ。牧草地のような土が硬いところでは、土を柔らかくすることがコツ。そのため、縦横80センチ深さ60センチの穴を掘り、土を埋め戻して、植え付ける。植え穴をしっかり掘って、根を張りやすいようにしよう。