ほったらかし菜園作ろうぜ

出典:Akimama

 

 ある種の野菜や果樹は、手入れをせずとも収穫を楽しめる。敷地の土は痩せ、農業技術もなく、しかし収穫は楽しみたい、という調子が良い人は、厳しい条件でも育つものを植えればいいのだ。ほったらかしで育つものなら農薬もいらない。というわけで、今回おすすめするのは、ものぐさ向けの野菜作りである。


 この条件を満たす夢の野菜がニラである。種から育てると収穫まで1年ほどかかるが、日向でも半日陰でもよく育ち、一度育ってしまえば一年に何度も刈り取れる。数十株も育てれば、週に1、2回料理に使ううちに最初に刈り取った株は再生している。ニラの無限ループである。


 おなじく、省スペースで農薬いらずの作物がナガイモ。こちらは1年に1度しか収穫できないが、つるを縦方向に伸ばすので敷地が狭くても栽培できる。秋に収穫して根塊の上部を埋め戻しておけば、翌年も収穫できる。肥料なしでもよく茂り、ほかのつる植物よりもつるが伸びるのが早い。病気や害虫にも強いのでグリーンカーテンにもぴったりだ。キュウリやゴーヤと比べても、痩せた土でもよく葉を茂らせる。


 少ないスペースで育ちながら、食卓への貢献度が高いのが薬味系野菜。大葉、バジル、ネギなどはそれぞれ数株植えておけば薬味を使うときに必要量を刈り取れる。とくに使い勝手がよいのが大葉だ。3〜4日休ませれば新たに再生するので、秋に枯れ落ちるまで何度も楽しめる。バジルはちょっと栄養や衝撃にうるさいけれど、大葉は痩せた土でもそこそこ育ち、雑に水をやっても風に吹かれても傷まない(バジルは水やりの水勢が強いだけでも傷む)。
 ネギは根っこがついてる泥ネギを買ってきて、根元を5cmほど残して植えればぐいぐい再生する。
 放任でもすくすく育つ薬味としてはミョウガも優秀だ。しかし、地下茎でワサワサ増殖し、春から晩秋まで庭で大きな面積を占める割には収量が少ない。日陰でも育つ、というか日陰を好むので、家の北側などほかの野菜が育ちにくいスペースに植えるのがおすすめだ。


 春先に初心者が葉物を植えるなら、サンチュがいい。結球するタイプのレタスは土が痩せているとうまく育たないこともあるが、サンチュやサニーレタスなどはどうやっても葉を茂らせる。育った葉を数枚かき取って利用すれば、2、3日あとには新しい葉が伸びている。1×1m程度のスペースをサンチュエリアにしておけば、トウ立ちするまで毎日サラダをボウルいっぱいに楽しめる。初めて植える葉物は断然サンチュがいい。






 わがやの菜園には、毎日アシナガバチがやってきて青虫を狩り、花の時期にはミツバチがやってきて受粉をしてくれる。これらのサービスは、近所に健全な自然があるから受けられるものだ。目先の収量に目が眩んで害虫に農薬をかけてしまったら、これらの益虫のサービスも受けられなくなり、それどころか自分の敷地の外にある豊かさまで損なってしまう。

 自分の菜園に薬をかけても、周囲に自然があれば益虫は供給され続ける。収量だけを伸ばすなら、受粉や除虫を助けてもらいつつ彼らの命を使い捨てるのが賢いやり方だろう。しかし、その一帯のすべての畑が命の使い捨てを行なったら?……虫が消えた世界ではいったい誰が受粉をしてくれるのだろう。