協生農法

出典:協生農法

 

厳しい環境で効果を発揮する「協生農法」

 協生農法とは、無耕起(耕さない)、無施肥(自然界の天然供給物と必要に応じた灌水のみによる栽培)、無農薬、種と苗以外は一切持ち込まないという条件の下、有用植物を生産する農法のこと。植物の特性を活かした生態系の構築や制御を行っており、栄養面の向上や生物多様性の回復、砂漠の緑化など、生態系全体に与える影響が考慮されている点が特徴だ。

この生産方法では、多様な植物や野菜を無農薬で混生密生させて育てる。そのため、農場には虫が多くいたり、さまざまな種の雑草が生えていたりするが、「生態系の循環」を大切にする協生農法においては、排除されることなく育てられている。さらに興味深いのが、協生農法が効果を発揮する環境だ。基本的に、耕作可能であればどのような場所でも実践可能だが、特に協生農法が適する環境があると太田さんは言う。

 サハラ砂漠以南など、貧困や砂漠化に苦しむ西アフリカの多くの地域で、協生農法の効果が発揮されるという。これまで作物が育ちにくかったこれらの地域で、食料生産ができるようになれば、貧困の解消につながるかもしれない。つまり、世界規模の社会課題解決の可能性も秘めているのだ。

そして、ソニーCSL発の協生農法プロジェクトがこれまで協生農法を実践してきた中で、特に注目を浴びた地域がブルキナファソだ。同国では、他の農法も含めて実証実験したところ、協生農法による売り上げがひときわ大きかったようで、ブルキナファソの平均国民所得のおよそ20倍にまで達した。さらに生産性に関しては、慣行農法の40~150倍にも上ったという。

「協生農法という漢字は、よく『共生農法』と間違えられます。共生は、『共に生きる』という意味。自然の生態系における『捕食者ー被食者(食べるー食べられる)』の関係は、一方が食べられて損をしてしまっているので共生ではありません。」

「しかし、たとえ損する個体が生じたとしても、全体としては食料が生産され、生物多様性が高まり、結果として環境が良くなるのが生態系の仕組み。食べられてしまった種も協力し、生態系に貢献している。個々の種が協力して生きているから“協生”農法なんです。」

例えば、従来の農法では農薬で殺されていた虫も、捕食者でありながら、同時に生態系の中で他の役割を持っている。農業において「邪魔者」とされる虫や雑草などを排除することなく、その役割を十全に発揮させるのが協生農法なのだ。そして、最後に太田さんはこのような言葉で締めくくった。

生態系を再生しながら、貧困解決の可能性も秘める。そんな協生農法の魅力とともに、その根底にある「協力」の精神が多くの人に届いていくといい。
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