出典:フレックプラス
福島県にも多くある里山地域では、春から夏にかけて山林内で山菜を採って食べることは、食品としての価値のみならず、楽しみであり、重要な食文化となっています。
野生の山菜は、除染されていない山林内などから採取されることがあるため、現在もなお基準値である100 Bq/kgを超過してしまう場合もあり、出荷制限や摂取制限が続いている地域も残っているのが現状です。
私たちは、野生の山菜やキノコを摂取することによる内部被ばく線量を見積もるため、人々がどのくらい野生の山菜やキノコを食べているか(食べていたか)、また、調理によってどのくらい放射性セシウム量(濃度)が増減するのかについて、調査を行っています。
野生の山菜やキノコを摂取することによる1日の放射性物質の摂取量は、山菜やキノコ類に含まれる放射性物質の濃度(例: 1kg当たりの放射能Bq)と野生山菜やキノコを食べる量(kg)を掛け合わせて推計することができます。
例えば、100 Bq/kgのコシアブラを10 g (0.01 kg)食べた場合、1 Bq放射性セシウムを摂取したとなります。
摂取量を推計するためには、濃度を知ることのほかに、野生山菜やキノコ類をどれだけ食べるかの情報が必要なのです。
しかしながら、野生の山菜やきのこを、1人あたりどのくらい食べているか(食べていたか)の情報はほとんどありません。
よって、私たちは山菜ごとの“食べる量”を調べる調査を行っています。
この摂取量データは、放射性物質に限らず、栄養素や他の化学物質の摂取量を評価する際にも役立ちます。
山菜シーズンである4~6月に、実際に調理した山菜の重さを秤で測定し(図)、食べた人数と回数などを記録用紙に記入してもらい、1人あたりの山菜類の食べた量を算出しました。
このような方法を食事記録法といいます。
最も高頻度に食べられていた山菜は、順番にコゴミ、ワラビ、ウド、タラノメ、フキでした(図)。
人によって食べる量は大きく違いましたが、一番食べられていたコゴミの量の平均値は一シーズンあたり300gでした。
限られた地域で限られた人数の結果ではありますが、比較的よく食べている地域での実際の摂取量を把握することができました。
食事記録法のように、食べる山菜の量を毎回秤で実測するのは大変です。
たくさんの人に実測してもらうのは非常に難しいため、私たちは、①食べる頻度、②1食あたりのおよその個数を回答してもらうだけで摂取量を推計する調査票を開発しました。
実測調査データと比較することで、開発した調査票の妥当性の評価(確からしさを評価すること)もおこなっています。
この調査票を用いると実測が不要なため、過去の摂取量を推計することも可能になります。
開発した山菜摂取量推計の調査票を使って、現在も野生山菜を食べることが制限されている地域の住民の方に過去の摂取量の聞き取り調査を実施しています。
山菜摂取量がわかれば、より実態に即した山菜を介した内部被ばく線量の評価ができるようになると考えています。
また、野生の山菜の利用量を知ることによって、山菜利用の価値を定量化することにもつながると考えています。