ちなみに雑草を放置し、除草を行なわないと農耕地はどうなってしまうのでしょうか。
雑草の種子は風や水、動物や人を介すなど、さまざまな要因で農耕地へ運ばれ生育します。
繁栄してしまうと、作物に必要な栄養や水分を横取りする形で生育し、下手すると作物の生育に必要な太陽光まで遮り奪うことがあります。
農家側からすれば、これ以上迷惑な存在はありません。収穫すべき作物は痩せ細ってしまったり、収穫量の減少につながるかもしれないからです。
しかし雑草の生育力は半端ではありません。
作物もそうですが、どの生き物も生きるのに必死ですから、刈っても刈っても次から次へと生えていきます。
雑草を取り除く方法には、物理的対処として抜き取ったり刈り取るほか、除草剤を用いて枯らす、前もって農薬を撒き、生えないように予防する方法などが挙げられます。
しかしどの作業においても、骨の折れる作業であることに違いはありません。
そんな中“自然農法”という農法が話題を呼んでいます。
この言葉の提唱者である岡田茂吉という人は、農薬や化学肥料に依存しない自然農法について、自然の摂理に順応すること・土の力を発揮させることを掲げています。
化学肥料や農薬の活用が活発化した時代においても、自然農法は実践され続けてきましたし、昨今さまざまな食に関する事件・事故が相次ぐ中、消費者側も食の安心・安全について関心を抱くようになったことから、自然農法の存在は決して珍しいものではなくなっているのです。
自然農法では、雑草だけでなく害虫や病害菌に対する対策も、慣行農法とはまた違ったアプローチで対応しています。
元々自然に備わっている仕組みを存分に活かし、下手に人の手で生態系を壊すのではなく、自然の流れに寄り添って作物を育てていくのです。
しかし雑草は取り除かない代わりに、もう枯れてしまった雑草はしっかり農耕地に利用するのが鉄則です。土壌中に住まう微生物や小動物による生物循環を活用し、農作物をイキイキと育てあげるのが狙いなのです。
ただし自然農法とはいえ、あくまでも“農法”ですから、作物を植えたらほったらかし、という訳ではありません。
野菜など農作物を収穫するために必要なことは人の手で行なわなければなりません。
種を取ったり、苗を植えたりすることは、農業者にとっては必要不可欠な行為と言えます。そのため雑草によって収穫物に影響が及びそうな場合には、人の手をもって雑草を防除する必要はあると言えるでしょう。
例えば自然農法の代表的な方法に、雑草を土にすきこまないことが挙げられます。枯れた雑草は、そのまま土の上に置いておくのです。人の手で土の中にすきこまなくても、虫や微生物といった小さな生き物が枯れ草などをしっかりと分解し、土へ還してくれるはずです。
自然農法は、自然の力を利用し、人の手を極力使わずに農作物を育て上げる農業と言っても過言ではありません。
しかしその分、軌道にのるまでは苦労も沢山経験することになるかと思います。自然農法で農作物を育てたい場合には、根気づよく農法に取り組む必要があります。
『奇跡のリンゴ』でおなじみの木村秋則さんも、自然農法で育て上げたリンゴを出荷できるようになるまでに、大変な時間を要しています。7年間はリンゴの花は咲くけれども実はならず、害虫と病気との闘いだったと言います。
あえて除草しない、という農法はなかなか大変な苦労と時間を要するものだということが分かります。