Daily Archives for 水曜日, 5月 2024

わたしの自然農法

出典:自然に学ぶ 福津農園

畑の小さい水循環
大雨も乾燥も大丈夫

 ドシャ降りの大粒の雨が来ても、梅雨の雨が降り続いても、たとえ播種直後でも、傾斜のきつい福津農園の野菜畑から濁水が流出するのを見たことがありません。
 逆に2013年のように梅雨からお盆にかけて例年の1割ぐらいしか雨のない猛暑の中でも、作物たちは無給水で元気にがんばりました。水をほしがるサトイモ、ナス、キュウリなどの作物にも、秋冬野菜も同様に水やりしません。何故か!?!不耕起草生栽培により、しっかりした「畑の小さい水循環」が機能するように期待して、準備しているからです。

雨水を吸い込む働き

 植物の茎葉等で土壌表面が被われているところに、不耕起で播種または苗を定植するので、雨滴の衝撃土が跳ね上がることもなく、雨水は空隙の多い土壌にゆっくり吸い込まれていきます。もし吸水速度を上回る強い雨となっても、落ち葉や腐葉土の間を穏やかに流れ下り、草の根のネットワークが土が流れ出すのを防ぎ雨水が濁りません(写真3)。土の表面に集積するバイオマスは優れた断熱材であり、保湿材です。同時に虫などの食料であり、すみかでもあります。ミミズ等の虫たちの活動は土の団粒化を雨水を土中に引き込む導管をつくります。
 作物の生育中も草マルチが有効に働きます。草の葉は土への太陽光の直射を防ぎ、かつ春から夏にかけては地際の空気を冷やし、調湿します。
 作物は盛んな光合成で取り込んだ太陽光エネルギーの転産物を根の伸長に使ったり、根の周りに共生する微生物たちに分けあたえます。特定の微生物群はそのエネルギーを駆使して、作物よりも強い能力で土中の水や栄養を集めて作物にお返しします。
 そして圧巻は高温乾燥に強いオクラや大豆のような夏作物や草たちの根の機能にあります。植物が生長中は土壌の水を集め地上部に送り出す役目を担います。死後は速やかにトビムシやササラダニ等の虫や微生物の餌となります。

小さいダムと共存の礼儀

 オクラや大豆のような夏作物が枯れると、残った太い直根跡やそれに接続する細根跡水道管となって、生前のお礼をするように地中深くまで穏やかに雨水を配ります。この根穴がドシャ降りで地表面に溢れる雨水をダムのように受け止めます。
 また、地表部に供給される落ち葉や枯れ草団粒構造を成す表土が根跡への土砂の流入を防ぎ、ダム機能を長持ちさせます。畑の作物と共存する雑草の根と根跡も大なり小なり同様の機能を発揮します。
 個々に見るとミクロのダム機能ですが、畑に無数に存在し目に見える大きな働きとなります。根跡ダムは一年周期で通気通水して、少しだけ子孫となる作物や雑草の生育環境を良好にしながら、再び元の土壌に戻ります。
 こうして畑の土は植物(草)に耕され豊かな農業生産を支える土壌へと成長します。植物の葉や根の一生は雨水を土壌中に浸透させ保水する理想的な配水機能を支えていて、有機物となって土に還るまで、一貫してその役目を全うします。
 私はこうした畑の植物が役目を全うすることも「共存の礼儀」と呼びます。不耕起草生だからこそ完遂可能な偉大な威力を発揮する「畑の小さい水循環」システムです。ムダがなく他の生物の役に立ち、負の遺産を残すこともない生命デザインの見事さに、ただ感動するばかです。
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